フランクフルトのあしだピアノ教室では、1歳からのプレピアノとピアノの個人レッスンを行っています。
前回までの記事で、ドイツへピアノで留学をする時の滞在許可について解説しました。
「自分のレベルではまだまだ」「手が動かない」「もうそういう年齢じゃない」という理由で留学をあきらめかかっているそこのあなた!
ピアノ留学はその気になればいつだってできますし、極端な話「ピアノを弾かない」ピアノ留学だってあるんです!
ぜひ「こうでなければ」という思い込みを捨てて、外の世界にチャレンジしてみませんか?
この記事があなたの背中を押すきっかけになれば幸いです。
前置きが長くなりましたが、滞在許可に関する以前の記事はこちらから。
しかしピアノで留学する際の一番の難関と言えば、何といっても家探しではないでしょうか?
ドイツの都市部の家賃は、最近のインフレも相まって上昇傾向にあります。日本円に換算するとびっくりするくらいの家賃のわりに、物件はそんなにいいわけでもない・・・という家賃と物件のアンバランスさが目立ちます。
さらに、貸主も安定した家賃収入がほしいため、長期的に住んでくれる人、安定した収入のある人を優先する傾向にあります。
ではふらっとドイツに来た日本人が住むところは全然ないのか?というとそんなことはありません。
ただ、一日中音出しOKといった好条件の物件はなかなかない、ということを念頭に置いて家探しをする必要があります。
以下、いくつか短期滞在の際の選択肢を挙げてみます。
ドイツでの家の探し方
ここから、短期滞在の際の家の探し方のヒントをいくつか挙げてみますが、どの方法にも共通して言えることは、物件に必ずしもピアノがあるわけではない(楽器を置けるわけではない)、ということです。
ピアノがない場合の解決策はこちらにまとめておきますので、そちらをご覧ください。
語学学校の寮に住む
長期のドイツ語コースに申し込むと、語学学校によっては付属の寮に入れることがあります。
学校によっては寮費が高かったり、またピアノを置ける可能性はほとんどありませんが、短期滞在であればまず初めに検討したい選択肢です。
大学付属の語学学校の場合、学生寮に入れることがあります。
宿泊施設があるかどうかで語学学校を選ぶのもよいでしょう。
サービスアパートメント
90日程度の短期滞在であれば、家具付きのサービスアパートメントに住むという方法があります。
到着したその日から生活をスタートできるというメリットがあります。また、市内のアクセスのよいところにあったり、ホテルを予約するような感覚で借りられるので、普通の家を借りるよりもハードルは低いでしょう。
デメリットとしては、ピアノを持ち込める可能性がほとんどないということ、家賃が割高であるということです。
“möbilierte Wohnung”、”Wohnen auf Zeit” といったキーワードで検索するとサービスアパートメントのサイトがいくつかヒットするはずです。
日本人向け掲示板などで探す
ドイツに住む日本人向けの掲示板がいくつかあり、そこで物件が紹介されていることがあります。
貸主が直接広告を出すこともあれば、ルームメイト募集といった形で物件が掲載されていることもあります。
メリットとしては、日本人向けなので契約が成立しやすい、コミュニケーションが日本語でできる、現地でのサポートも受けられる可能性があるといったところでしょうか。
デメリットとしては、物件の数が限られることです。また、日本人同士とはいえ相性の問題もあるので、オーナーやルームメイトとうまくやっていけそうか、やりとりの段階で見極めることも大切です。
「日本人」「海外」「掲示板」といったキーワードで検索してみるとよいでしょう。
一時的なサブリースの物件
こちらは少しハードルが高くなりますが、長期旅行や留学などをする人が、自分の住んでいる家を一時的に貸し出すことがあります。これをドイツ語で Zwischenmiete といいます。
貸す期間が限られるので、無期限の物件よりも競争率がやや低くなるというメリットがあります。また、生活用品はそのまま置いていってもらえることが多いので、家財道具をいちいち買う必要もありません。ごくまれに、ピアノ付きの物件が出ていることもあります。
デメリットとしては、貸し出しにあたって事前内覧が必要になることが多いことです。貸す側としても、借りての人となりを見ておきたいという気持ちがあるので、当然と言えば当然かもしれません。
1年以上の滞在で、ドイツに来てから家を探す、という時に選択肢の一つとして考えるとよいでしょう。
家探しの時の注意
ドイツで家を借りるときには Kaution という敷金を支払う必要があります。Kaution は特に家を汚したり、備え付けの物を破損したりしない限り全額帰ってきますが、初期費用として予算に入れておくことを忘れないようにしましょう。
また、ドイツの家賃には Kalt と Warm の2種類があります。Kaltmiete は物件そのものの家賃、Warmmiete は暖房費や管理費が込みの家賃です。この2つの家賃はまったく金額が異なってきますので、調べる段階でどちらの家賃が掲載されているのかしっかり確認しましょう。
日本にいる間に物件を探す場合はオンラインで探すことになりますが、事前内覧は不要、すべてオンラインで完結できるといった物件は詐欺の可能性が高いので気を付けてください。
一般的な家探しでもそうですが、相場よりも極端に家賃が安い(その割にとてもきれいな物件の画像が掲載されている)、オンラインのみでの契約を求めてくる(オーナーが長期入院中、海外出張中で現地対応できないというのがよくあるパターン)、会ったこともないのにやたらと「あなたは良い人だ、気に入った」とほめてくる、というのは詐欺ですので気を付けてください。
滞在先にピアノがない!どうする?
ピアノを買う、借りる
さて、住むところが無事見つかったとしても、滞在先にピアノがない場合。一番手っ取り早いのは、ピアノをレンタルすることでしょう。電子ピアノなら月35ユーロ程度、アップライトなら月60ユーロ程度から借りることができます。
レンタルの場合最低契約期間が定められている場合もあるので注意しましょう。ただ、海外へ出国する場合、契約期間中でも解約できる可能性がありますので、借りる前に条件をしっかりとお店の人に確認しましょう。
もし2年以上の滞在が見込まれる場合は、楽器を買って、帰国時に売った方が結果的にお得になる場合もあります。ただしこれはアコースティックの楽器を買うケースに限られます。電子ピアノの場合は価値の減少が速く、数年経つとほとんど価値がなくなってしまいます。
練習室を借りる
練習用のスタジオを借りることもできますが、音楽教室の空き教室を借りるのもお勧めです。どこの街にも音楽教室はありますので、レッスンの空き時間にピアノを借りられないか問い合わせてみましょう。貸し出しをオフィシャルにしていないところでも、交渉次第で貸してもらえることがあります。
現地の掲示板に広告を出す
家探しのところでも、現地の日本人向け掲示板で探す方法を挙げましたが、こうした掲示板でピアノを貸してくれるお宅がないかどうか聞いてみるのも一つの方法です。1日1時間程度ならいいよという方がいるかもしれません。
楽器屋さんで弾かせてもらう
これは楽器屋さんにもよりますが、展示しているピアノで練習してもいいよと言ってくれるお店もあります。昔私が出張でドイツのとある都市に滞在していた時、ホテルの向かいにスタインウェイハウスがあったのですが、そこのオーナーの方はとても親切で、滞在中毎日練習に来ていいよと言ってくださいました。
もちろんこれはお店のご厚意によるものなので、最初から楽器店のピアノをあてにすることはお勧めできませんが、楽器店の方なら練習できそうな場所をご存じかもしれませんし、コンタクトをしてみて損はないかと思います。
結論として、滞在先にピアノがなくても工夫次第でなんとかなるものです。私の大学時代の先生は、チャイコフスキー・コンクールに参加するにあたって、旅費がなかったためシベリア鉄道でモスクワに向かい、コンクール前の大事な1週間を紙鍵盤で練習したという伝説の持ち主でした(本選まで出場されました)。
ピアノが練習できなくなるから海外には行かない、とあきらめるのはもったいない!
不思議なもので、あきらめずに行動していると必ず応援してくれる人に出会えるものです。
ピアノへの熱い思いを通して、すてきな出会いがあることを祈っています。
当教室のレッスンについては、こちらをご覧ください。