フランクフルトにあるあしだピアノ教室では、ピアノ個人レッスンと、親子で音楽を楽しむグループレッスンを行っています。
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あしだピアノ教室を開講して、まもなく1年になります。
少しずつ集まってくださった生徒さんたちとのご縁に改めて感謝しつつ、
私のレッスンへの思いについて少しずつ書きたいと思います。
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いきなり結論から言うと、私がレッスンで伝えたいことは、
「あなたの意見はあなたが言うから価値がある」
これに尽きます。
ピアノの練習はひたすらに自分自身との対話です。
この音で自分は満足できるのか?
この表現で自分の思いは伝わるのか?
ここを突き詰めていけるかどうかが大切で、
そんなの別にどうでもいいし、と言われたらピアノレッスンはたちまちナンセンスの塊になります。
だから私は生徒さんの年齢や進度にかかわらず、しつこくしつこく質問します。
ここはどんな風景?
どういう気持ちなんだろう?
誰が聴いているのかな?
みんな自分の思いつくことは他の誰でも思いつくだろうと錯覚しがちで、
だから今さら自分が言うことでもないだろう、と思っている人が多いのですが、その考え方で行くと、すでにたくさんピアノが弾ける人がいるのになんで今さら自分がピアノを弾くのかという話になってしまう。
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ドイツの学校教育では、授業中に発言しないと欠席扱いになるくらい、自分の意見を言う、ということが大切にされています。
正しい意見か、建設的な意見か、ということよりも、まず発言することそのものに意味がある。
その教育法が良いかどうかはまた別として、私たちが弾くクラシック音楽はそういった土壌が生み出した文化であるということを忘れてはならないのです。
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いきなり話が飛びますが、地球が丸いってすばらしいと思うんですよね。
地球上のどこに立っていても、自分の立っているところを深く深く掘っていけば、同じように掘り進めてきた誰かと地球の中心で出会うことができるのです(超高温で焼かれるだろうという現実的な意見は聞かないことにします)。
地球の丸さは、何かを極めれば行きつくところは一つという暗喩のようにも思える。
何かを極めるとは、自分の足元を深く掘ること。
ピアノが自分自身を深く知るきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。