3月8日に行われるみんなのコンサートのプログラムと曲目解説です。
プログラム&曲目解説
モーツァルト::『ああ、お母さま、あなたに申しましょう』にもとづく12の変奏曲(きらきら星変奏曲)ハ長調K.265 (ピアノ)
変奏曲とは、最初に弾かれる曲(テーマと呼ばれる)を、細部の音型やハーモニーを変えるなどして作り替えていく手法のことで、もととなるテーマがわかりやすい変奏もあれば、原形をとどめないくらいに変容された変奏もあります。
テーマが食材で(たとえば豆腐)、変奏はその調理法(たとえば冷ややっこ、湯豆腐、豆腐ハンバーグ、など)と考えるとわかりやすいかもしれません。
モーツァルトのきらきら星変奏曲は(ちなみに当時はこの曲は別の歌詞で知られていました)、おなじみのきらきら星のメロディーに続き、12曲の変奏曲が演奏されます。モーツァルトはこの曲を自分のピアノの弟子の練習用に書いたと言われています。変奏曲としては非常にシンプルながら華やかさもある作品として、今日でもピアノ愛好家に高い人気を誇っています。
モーツァルト:オペラ『魔笛』より、「私は鳥刺し」「復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え」(フルート)
このオペラ『魔笛』はモーツァルトが残した最後のオペラで幻想的な物語と多彩な音楽が魅力の名作です。本日は、その中から2つの有名な旋律をフルート二重奏でお届けします。
まずは「私は鳥刺し」(“Der Vogelfänger bin ich ja“)は陽気な鳥刺しパパゲーノが、自分の仕事と将来の夢について歌う、親しみやすい楽しいアリアです。軽快なリズムと明るいメロディーが特徴です。
続いて夜の女王のアリア「復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え」(“Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen“)は夜の女王が娘パミーナに対して激しく怒りをぶつけ、敵を討つように命じる迫力満点のアリアです。原曲では超高音のソプラノによって歌われる技巧的な楽曲です。
モーツァルト:トルコ行進曲(フルート、ピアノ)
誰もが一度は耳にしたことがある『トルコ行進曲』。この曲はモーツァルトのピアノソナタ第11番K.331の第三楽章として書かれました。18世紀のウィーンではオスマン帝国の軍楽が流行しており、モーツァルトをはじめ、多くの作曲家が「トルコ風」の作品を手がけました。
本来はピアノ独奏のための曲ですが、今回はフルート2本とピアノという特別な編成でお届けします。フルートが軽快なリズムと華やかなメロディーを奏で、ピアノがトルコの軍楽隊の打楽器のリズムを表現することで、原曲とはひと味違う魅力をお楽しみください。
モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第35番ト長調K.379(ヴァイオリン、ピアノ)
第一楽章:アダージョ – 第二楽章:アレグロ
第三楽章:主題(アンダンティーノ・カンタービレ)- 第一変奏 – 第二変奏 – 第三変奏 – 第四変奏 – 第五変奏(アダージョ)- 主題(アレグレット)
1781年にウィーンで作曲されたこのソナタは、彼の生涯に40曲以上も書かれたヴァイオリンとピアノの為のソナタのなかでも極めて、彼の作品の特徴であるオペラ的な要素を色濃く感じることができます。
実際、同年には彼のオペラ作品の中でも今日まで世界各地で上演されている『イドメネオ』が作曲され、このヴァイオリンソナタの第一楽章にもそのドラマティックな展開からこのオペラを彷彿とさせるものがあります。第三楽章の主題と変奏もオペラの場面展開や登場人物を想像しながらお聴き頂くと楽しいかもしれません。
ドップラー:華麗なワルツ “Valse di Bravura“(フルート、ピアノ)
„Valse di Bravura“は、2本のフルートとピアノのための華麗な作品です。この曲は19世紀にフランツ・ドップラーとカール・ドップラーの兄弟によって共同作曲されました。彼らは当時のオーストリア=ハンガリー帝国でフルート奏者、指揮者、作曲家として活躍しました。
「Bravura」という言葉は、熟練した技術や卓越した演奏を意味します。タイトルが示すように、この作品は優雅なワルツの響きと、速いパッセージや装飾音などの高度な技巧を組み合わせた、非常に演奏効果の高い作品です。
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジークK.525より第一楽章(ヴァイオリン、フルート、ピアノ)
アイネ・クライネ・ナハトムジーク(K.525)は、モーツァルトが1787年に作曲した弦楽アンサンブルの作品です。セレナーデという種類の音楽で、18世紀には夜の野外で娯楽として演奏されました。4つの楽章で構成されていますが、本日は第一楽章を演奏します。
全楽章を通して明るく優雅な音楽です。作曲の経緯は正確には分かっていませんが、モーツァルトの代表的な作品の一つとされています。その親しみやすいメロディーと陽気な雰囲気で、アイネ・クライネ・ナハトムジークは世界中のコンサート、映画、メディアで広く愛されています。
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奏者プロフィール
芦田 真実(ピアノ)
3歳からピアノを始める。桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業後、ドイツ・ライプツィヒ大学音楽学専攻卒業。第25回カワイ音楽コンクール中国地区本選最優秀賞をはじめ、子どもの頃よりコンクール受賞多数。在学中より演奏活動を開始し、ライプツィヒ・メンデルスゾーン・ハウス、マグデブルク・クルトゥーアハウスでのソロコンサートへの他、子ども向けのレクチャーコンサートや、地域の老人ホーム等への出張コンサートも行っている。フォーカル・ジストニアを発症した経験から、音楽家の演奏障害についての周知活動も行う。ドイツ音楽生理学・音楽医学学会 (DGfMM) 会員。あしだピアノ教室主宰。
田中 陽子(フルート)
11歳より母の手ほどきを受けフルートを始める。県立西宮高等学校音楽科のフルート科を卒業後、ニュルンベルク国立音楽大学にフルート科で入学。2010年同大学を最高得点でディプロム取得後、ヴュルツブルク国立音楽大学に進学し、2013年にコンサートディプロム取得し卒業。2009年にはドイツニュルンベルク交響楽団、2011年・2012年はニーダーバイエルン・フィルハーモニーにて研修生として研鑽を積む。2012年から2018年までドイツのエアランゲン、エッケンタール、ノイマルクトの各音楽学校でフルート講師として務めるほか、ドイツおよび日本で演奏活動を行う。これまでに森田純子、金川知子、山越直弘、ガービー・パス・ファン・リート、マルクス・フレグナーニ、ヘルマン・クレマイヤー、ウラディスラフ・ブルンナーの各氏に師事。
田和バッフォー あゆみ (フルート)
岡山くらしき作陽大学音楽学部音楽学科フルート専攻卒業。副専攻ピアノ。2009年渡独後マインツ市立ペーターコルネリウス音楽院フルート科卒業。フランクフルト音楽大学修士課程古楽器科トラヴェルソ(バロック)フルート専攻卒業。副専攻チェンバロ。在学中よりモダンフルート、バロックフルート共に様々な演奏会にて譴責を積む。ドイツ現地の音楽学校等でフルートレッスンを行う傍ら、2016年独自のフルート教室を立ち上げる。レッスンで沢山のお子さんとかかわる中、リトミックや音楽初等教育 (Musikalische Früherziehung) に興味を持つ。その後フランクフルト・ドクターホッホ音楽院にて基礎音楽教育学部卒業。副専攻声楽。現在フランクフルト日本人国際学校幼稚部の外部リトミック講師としてもレッスンを行っている。
川﨑 美和(ヴァイオリン)
6歳よりヴァイオリンを始める。
玉川大学芸術学科音楽専攻を卒業後、渡独。
ドイツ シュポアアカデミー フライブルクにて研鑽を積む傍ら、ヨーロッパ各地のマスターコース、オーケストラ、室内楽アカデミー、古楽器アカデミーに数多く参加。2016年よりフランクフルト在住。個人教授をする傍ら多様な編成のオーケストラ、アンサンブルで活動。2018年よりピアノトリオ “Trio Eranthis“ (トリオ エランティス) のメンバーとしてフランクフルトを中心に活発な演奏活動を行っている。
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演奏者一同