フランクフルトのあしだピアノでは、1歳からのプレピアノとピアノの個人レッスンを行っています。
先日こちらの記事で重力奏法のことを書きました。
こちらの記事が好評のようなので、今回はさらに簡単に重力奏法を体感できる裏技について解説したいと思います。
そもそもなぜ重力奏法なのか?
まず、なぜそもそもなぜ重力奏法が大切なのか?という話ですが、前回の記事でも書いた通り、ピアノの弾き方にはトレンドがあります。
ピアノを弾く・聴く環境は時代の移り変わりとともに変化してきました。
ピアノは最初は宮廷のサロンから始まって、産業革命とともに一般家庭にも普及し、今日では何千人も入るコンサートホールで演奏されることもあります。
部屋の広さや音響が変われば、求められる奏法もおのずと変わってきます。
よく重力奏法の対極として引き合いに出されるのがハイフィンガー奏法です。これはもっぱら指のアクションによって音色や音量を調節するものです。大きい音を出すには指を高く上げることになり、ここから「ハイフィンガー」と呼ばれるようになりました。
サロンのような小さい会場であればハイフィンガー奏法でも問題ないかもしれません。また、バロック音楽のようにチェンバロの音色を想定して作られた楽曲にはハイフィンガー奏法の音色が合うこともあるでしょう。
しかし指を高く上げるにも限界があります。そもそも人の手は何かをつかむように発達をしてきているため、指を付け根から反らせる動きは手の機能的にも不自然なのです。
指を高く上げるのではなく、指先に伝える腕の重みで音量や音色を調節する重力奏法であれば、手に負担をかけずに楽にピアノを弾くことができます。
重力奏法を一瞬で体感できる裏技
しかし普段から指だけで演奏することに慣れてしまっていると、腕の重みを使いましょうと言ってもなかなかその感覚をつかむのは難しいものです。
そこで使うのが、こういった手首に固定できるウェイトです。
これを手首に装着してピアノを弾きます。
すると自分の音色が一瞬にして変わることに気がつくはずです。まるで熟練のピアニストのような深い音色が出るようになります。
電子ピアノでは音色の違いがわかりにくいかと思いますので、お家に電子ピアノしかない方も、ぜひアコースティックのピアノで試してみてください。
ただ、音色の違いはわからなくても、ピアノがとても弾きやすくなる感覚はあるかと思います。
なぜ手首にウェイトをつけると音が変わるのか?
これは単純に鍵盤にかかる重さが増すということに加えて、ウェイトの重みを支えようと腕全体が協働するようになるためです。
指だけで弾く場合、腕の動きと指の動きが連動していない(実際には連動なしにピアノを弾くことはできないのですが、最小限の連動しかしていない)ことが多いです。
手首が落ちないように腕が無意識に支えることにより、指から腕、さらに上半身にかけての一体感を取り戻すことができます。
さらに手そのものが重いと、ピアノを弾く時の基点が鍵盤の表面ではなく、鍵盤の底になります。鍵盤の底にしっかり指が落ち着くことができるので、腕の重みを最大限弦に伝えることができます。
この感覚が、ボディ・レガートの基本になってきます(ボディ・レガートについては別記事で書きます)。
音色の違いを実感してみよう
重力奏法の感覚ってどんなもの?と疑問に思ったら、ぜひ今回紹介した方法を試してみてください。
指と腕と上半身が一体となって作用すると、ピアノの表現の可能性がぐっと広がることを実感できるかと思います。
何より大切なのは、自分自身の体でこれだけ深い音が出せるということ=隠された自分の可能性に気づくことです。
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